「最近どうもやる気が出ない」「疲れているのに眠れない」「涙もろくなった」など、この様な不調を感じることはないでしょうか。
これらはうつ病の初期によく見られる症状です。
うつ病を長期にわたり放置しておくと、症状固定してしまう危険性があります。
症状固定とはこれ以上治療をしても症状が改善しない状態のことです。
うつ病の治療をせず放置していると、時間の経過とともにその状態が当たり前になります。
こうなると治療の効果も上がりにくく、長期間の治療を余儀なくされるのです。
そうなる前に不調を感じたら早期の受診と治療が大切になってきます。
今回はうつ病の受診から診断までの流れをお伝えします。
うつ病とは?
うつ病は気分障害の一つです。
憂うつな気分や食欲、睡眠欲、性欲など様々な意欲の低下をまねく精神的症状の他、不眠や倦怠感などの身体的症状を伴うこともあります。
発症原因は分かっておらず、慢性的に脳のエネルギーが不足している状態です。
病気やケガなどの身体的ストレス、進学や就職などの大きな環境の変化、対人関係や仕事の悩み、親しい人との死別などの精神的ストレスが引き金となってうつ状態が表れることがあります。
このうつ状態が長引き、生活に支障をきたし大きな苦痛を伴うようになるとうつ病と診断されるのです。
どのような性格の人でもうつ病になる可能性はありますが、特にまじめで責任感が強い人に多いといわれています。
一般的に環境変化の大きな女性の発症率が高いとされ、およそ男性の2倍程度です。
生涯有病率は6.5%で、これまでにうつ病を経験した人はおよそ15人に1人。
まさに誰がうつ病になっても不思議ではないといえます。
参照:厚生労働省HP
参照:厚生労働省HP「地域におけるうつ対策検討会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0126-5b2.html
うつ病と診断されるまで
精神科や心療内科の受診と聞くと身構えてしまう方もいるかもしれません。
しかし基本的には内科などと診療の流れは同じです。
心身の変化などをあらかじめメモしていくと、スムーズに診察が進みます。
各医療機関によって若干異なることもありますが、大まかな診断までの流れを解説します。
参照:厚生労働省HP「全国医療機関検索」https://kokoro.mhlw.go.jp/facility/
1.予診
事前に問診票記入を求められることがあります。
予診とは診察前に看護師や臨床心理士、精神保健福祉士などによって行われる詳細な症状の聞き取りです。
聞かれることは以下のような項目です。
・何に困っているのか
・病歴・家族歴・服用中の薬など
場合によっては職場や家庭の様子、人間関係などを聞かれることもあります。
2.各種検査
現在現れているうつ症状が身体の異常からきているものかどうかを調べるための検査です。
検査内容は以下のようになります。
・身体測定
・尿検査
・血液検査(血糖値、甲状腺機能、肝腎機能など)
・心電図
・必要に応じて脳検査(CT、MRI、SPECT検査)
3.診察
医師から悩んでいる症状や、生活の中での変化について聞かれます。
しかし初対面の医師に的確に現状を伝えるのは難しいものです。
事前に悩んでいる事柄(仕事・人間関係など)、今最も困っている症状や症状が出るタイミング、症状が変化したかなどを事前にメモして持っていくといいでしょう。
このように患者本人に症状を聞くこと(問診)は精神科の診断・治療でとても重要です。
また患者本人だけではなく、普段の様子をよく知る家族や近親者同伴の診察も有効でしょう。
4.診断
身体疾患やその治療薬がうつ病の症状に影響を与えておらず、うつ病の診断基準を満たしているとうつ病の診断がおります。
うつ病の診断基準には、アメリカの診断基準である「DSM-5」(精神疾患の診断・統計マニュアル)やWHOの診断基準の「ICD‐10」(精神および行動の障害―臨床記述と診断ガイドライン)が用いられます。
「DSM-5」は1か2どちらかの症状が当てはまり、合計5つの症状が2週間以上続く場合にうつ病と診断されます。
1.ほぼ毎日の抑うつ気分
2.ほぼ毎日の興味や喜びの著しい減退
3.著しい体重の増減、ほぼ毎日の食欲の増減
4.ほぼ毎日の不眠や過眠
5.ほぼ毎日の精神運動性の焦燥または制止
6.ほぼ毎日の疲労感、または気力の減退
7.ほぼ毎日の無価値観、または過剰な罪責感
8.思考力や集中力の減退
9.死や自殺への念慮、または自殺企図
「ICD‐10」では抑うつ気分、興味と喜びの喪失、強い疲労感などをうつ病の典型的な症状とし、これらの内2つ以上の症状があり、かつ以下1~7の症状の2つ以上が2週間以上続くとうつ病と診断されます。
1.集中力と注意力の減退
2.自己評価と自信の低下
3.罪責感と無価値感
4.将来に対する希望のない悲観的な見方
5.自傷あるいは自殺の観念や行為
6.睡眠障害
7.食欲不振
5.治療
ストレスを軽減するために人間関係や職場環境の改善などの環境整備を行い、十分な休養を取ることが第一です。
そのうえで抗うつ薬(SSRI・SNRI)などの薬物療法が用いられます。
また症状によっては抗不安薬や睡眠導入薬などが使用されます。
治療を長引かせない為にも、うつ病は初期の段階でしっかりと治療を受けて、寛解(症状が殆どなくなった状態)にさせることが重要です。
うつ病で休職・退職する場合
うつ病で休職や退職を決めたときの手続きの流れをご説明します。
うつ病による休職
勤め先の就業規程によって休職制度は異なります。
休職を考えている方は休職中の給与支給の有無や、休職期間の確認を行ってください。
実際に休職する際に会社に提出する書類は、診断書と休職申請書(休職願い)の2つです。
実際の休職までの流れは以下のようになります。
- 専門医による診断書の発行
- 上司や人事担当者と面談
- 休職申請書類の提出
また傷病手当金を受け取るには、休職者が自分で加入の保険組合に申請する必要があります。
申請の流れは以下のようになります。
- 各健康保険の事務所に問い合わせて申請書をもらう、またはHPから申請書をダウンロード申請書に記入
- 医師に所定欄に記入してもらう
- 書類提出
うつ病による退職
うつ病により仕事を続けることが難しい際は、思い切って退職して治療に専念するという選択もあります。
退職までの流れは以下の通りです。
- あらかじめ医療機関を受診しておく
- 会社に退職の意思を伝える
- 各種保険(健康保険・雇用保険・厚生年金)の切り替え手続き
- 会社から離職票などを受け取る
なお失業保険と傷病手当金は同時に受給できないため、どちらか一方を選ぶことになります。
どちらを選択するかは個人によって条件が異なるため、ご加入の健康保険組合やお近くのハローワークで相談してみましょう。
失業保険を申請する際には会社からの雇用保険被保険者離職票をハローワークに提出する必要があります。
うつ病で仕事を続けるのが難しいときに受けられる支援は?
どの制度を利用できるかは個人によって異なります。
主治医と相談のうえ可能であれば、精神障害者保健福祉手帳を取得しておくと様々な割引などの支援を受けることができます。
うつ病の方が受けられる可能性のある制度です。
・傷病手当金
・労災保険(労働が原因の疾病の場合)
・失業手当(雇用保険給付)
・自立支援医療制度(精神通院医療費の公費負担)
・精神障害者保健福祉手帳の取得
・障害年金
・生活困窮者自立支援制度
・生活保護など
うつ病が寛解し働けるようになった場合、就労移行支援事業所などの就労支援サービスを受けることができます。
参照:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/kokoro/support/promotion.html
まとめ
今回はうつ病の受診から診断までの流れと、その後に利用できる制度などをお伝えしました。
うつ病は長引くと深刻な状況になる病気です。
早めの受診で早期に治療を行ってください。
また仕事でストレスを抱える方は、無理のない働き方という選択肢もあります。
私たちデジキャリITは、就労移行支援事業所として、疾患や障害等の事情があってお仕事に就くことに苦労している方に対して、相談や就職準備、アドバイスなどのサポートを行っています。
「スムーズに復職できるか不安……」「再就職先が見つからない……」などとお悩みを抱えている方は、一人で悩まずに一度相談に来られてみてください。
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