皆さんは非定型うつ病という言葉を聞いたことがありますか?
非定型うつ病は「新型うつ病」とも言われており、従来のうつ病の症状に当てはまらない症状が表れるうつ病のひとつです。最近はうつ病という言葉が広まりつつありますが、非定型うつ病の認知はまだまだだと言えるでしょう。そこで今回は非定型うつ病について詳しく解説していきたいと思います。
非定型うつ病について
非定型うつ病は、一般的なうつ病とは異なる症状を示すうつ病のひとつです。従来のうつ病は40〜50歳代が多いのに対し、非定型うつ病は20〜30歳代の人に多く、若い方がなりやすい傾向にあります。
非定型うつ病の特徴として、嫌なことまたは苦手なことがある場合のみうつ病の症状が出ます。逆に好きなことには積極的に取り組めるという特徴があります。自身も周りも気づきにくいため、「わがまま」に見えてしまうケースも少なくありません。
参照:非定型うつ病とは?
https://works.litalico.jp/column/mental_disorder/054
非定型うつ病の特徴とうつ病との違い
非定型うつ病にはいくつかの特徴があります。またこれらは従来のうつ病と違う特性を持っています。ここでは非定型うつ病の特徴と、うつ病とはどう異なるのかを見ていきたいと思います。
反応性の強さ
良い出来事やポジティブな刺激に対しても強い感情反応を示す傾向にあります。
・良いニュースへの反応
良いニュースを受け取ったときに極端な喜びや興奮を感じる傾向があります。これは、一般的なうつ病の患者が同じ出来事に対して感じる感情よりも強い場合があります。
・ポジティブなイベントへの過度な期待
良い結果が期待されるイベントや状況に対して、過度な期待や興奮を示すことがあります。
そのため、失望や挫折感が大きくなる可能性があります。
・良い結果への過剰な反応
良い結果や成功を収めたときに、通常よりも強い喜びや満足感を感じることがあります。そのため、達成感や充実感が非常に強くなることがあります。
《異なるポイント》
うつ病の方は通常ネガティブな刺激や、抑うつ状態のためにポジティブな出来事に対して感情的な反応が鈍くなることがあります。しかし、非定型うつ病の方は良い出来事やポジティブな刺激に対しても強い感情反応を示すことがあります。
睡眠障害
非定型うつ病では、過眠(睡眠過剰)や睡眠の質の低下が見られることがあります。
・過眠(睡眠過剰)
睡眠時間が長く、昼間の眠気や居眠りの傾向が強くなることがあります。これにより、日中の活動が制限される可能性があります。
・睡眠の質の低下
長時間の睡眠や過度の眠気にもかかわらず、彼らは十分な休息を得られず、眠りが浅く不安定であることがあります。
・日中の活動に影響
過眠や睡眠過剰は日中の活動や社会的な機能に影響を与える可能性があります。そのため、昼間の仕事や学校、社交活動に参加することが難しくなる場合があります。
治療や管理には睡眠専門家や精神保健専門家の支援が必要です。適切な治療法を見つけることで、睡眠の質と日中の機能を改善することができます。
《異なるポイント》
一般的なうつ病の場合、不眠症や早朝覚醒が一般的な睡眠問題として見られますが、非定型うつ病ではむしろ過眠(睡眠過剰)が特徴的です。特に睡眠の質の低下が激しく、日中の活動に悪影響を及ぼします。
食欲増進と体重増加
ストレスやうつ状態にあるときに食欲が増し、体重が増加する傾向があります。
・食欲増進
食欲が増進する傾向があります。ストレスやうつ状態にあるときに、食べ物への欲求が強くなり、食事量が増加することがあります。
・体重増加
食欲の増進により、体重が増加することがあります。これは、摂取カロリーが通常よりも増え、体重管理が難しくなるためです。
・快い食べ物の選好
ストレスの解消や快楽を求めて、高カロリーで甘い食品やジャンクフードなどの快い食べ物を選好することがあります。これにより、不健康な食習慣が強化される可能性があります。
・体重管理の困難
体重管理が困難になることを意味します。これにより、肥満や関連する健康問題のリスクが増加する可能性があります。
《異なるポイント》
通常のうつ病では食欲不振や体重減少が見られることが一般的ですが、非定型うつ病では逆に食欲が増し、体重が増加する傾向があります。
重い感じや肢体の麻痺
肢体が重く感じたり、身体的な麻痺感を感じることがあります。これは心因性のものであり、身体的な病気や障害ではありません。
・重い感じや肢体の麻痺
特に朝や運動を始める前に、身体が重く感じることがあります。この感覚は、日常の活動や行動を妨げることがあります。また、手や足などの特定の部位が麻痺したり、重く感じたりすることがあります。これは、身体的な動きや活動を制限することがあります。
・身体的な不快感
身体のある部分に不快感を感じることがあります。これには、痛みや圧迫感、張り感などが含まれます。
これらの身体的な症状は、通常、患者が日常的な活動や日常生活を行う際に経験されます。これにより、日常の機能が制限されることがあります。これらの身体的な症状は、非定型うつ病の診断基準の一部として考慮されることがあります。
《異なるポイント》
一般的なうつ病で重い感じを覚えることはありますが、身体の不快感や麻痺といった症状は非定型うつ病の特徴と言えます。
孤立感や社交不安
社会的な活動や人間関係に参加することが難しくなる傾向があります。孤立感や社交不安を感じやすく、他者とのコミュニケーションを避けることがあります。
・孤立感
周囲の人々とのつながりを感じにくく、孤独を感じる傾向があります。彼らは自分自身を社会的に孤立した存在と感じ、他者との関係を築くことが難しいと感じることがあります。
・社交不安
社交不安は、非定型うつ病の患者にとって一般的な症状です。彼らは社交的な状況に不安を感じ、他人との交流を避ける傾向があります。また、他者との関係や対人コミュニケーションに対する恐れや緊張を感じることがあります。
・自己否定感
孤立感や社交不安は、自己価値感を低く評価し、自己否定的な考え方を持つ原因となることがあります。彼らは自分自身を他者と比較し、自己評価が低下することがあります。
・日常生活への影響
社交的な場面や公共の場に不安を感じ、これらの場所や活動を避けることがあります。これにより、仕事や学校、社会的なイベントへの参加が制限される場合があります。
《異なるポイント》
これらの症状はうつ病の方と似ていますが、孤立感や社交不安を強く感じやすいとされています。
非定型うつ病の原因とは
上記では非定型うつ病について見てきました。ではこれらを引き起こす原因とは何でしょうか。
非定型うつ病の原因は、多くの場合、複数の要因が組み合わさって引き起こされると考えられています。一般的なうつ病と同様に、生物学的、心理社会的、環境的要因が関与しているとされています。
遺伝的要因
遺伝的素因がうつ病やその関連症状の発症リスクを増加させるという研究があります。家族歴にうつ病やその他の精神疾患がある場合、個人が非定型うつ病を発症するリスクが高まる可能性があります。
また、一卵性双生児の研究により、遺伝的要因が非定型うつ病の発症に影響を与えることが示されています。一卵性双生児のうち、片方が非定型うつ病を発症した場合、もう片方の双子の発症リスクが高まる可能性があります。
生物学的要因
脳内の神経伝達物質のバランスの乱れ、特にセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の低下が非定型うつ病の発症に関与する可能性があります。
また神経化学的な異常、特に前頭前野や扁桃体などの脳の領域の活動の異常がうつ病の症状と関連しています。
心理社会的要因
ストレスやトラウマ、人間関係の問題、仕事や学業のストレス、生活の変化、貧困などが、非定型うつ病の発症を促す可能性があります。
さらに、自己評価や自己肯定感の低下は非定型うつ病の発症や症状の悪化に関連しています。自己否定的な考え方やネガティブな自己イメージは、うつ病のリスクを増加させることがあります。
環境的要因
個人が日常的に経験する生活環境や外部要因が非定型うつ病の環境的要因になる可能性や非定型うつ病の重症度に影響があります。
社会的支援の不足、経済的な問題や貧困による生活の不安定さ、家庭内の葛藤や虐待、家族の離婚などの家庭環境、職場環境や過労などが影響すると考えられています。
さらに、社会的な孤立や孤独感など、友人やコミュニティとの繋がりが不足する場合にもこれらのことが生じます。
まとめ
今回は非定型うつ病とその原因についてお伝えしてきました。非定型うつ病は一般に、適切な治療やサポートを受けることで改善される可能性がありますが、完全に治るかどうかは個人によって異なります。重要なのは、早期に適切な治療を受けることや、症状の管理や再発予防に焦点を当てた継続的なケアを受けることです。 先に記述した非定型うつ病の特徴が少しでも見られる場合には、早めに周りの方に相談しましょう。
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