アスペルガー症候群は自閉症スペクトラム障害(ASD)の一種であり、社会的なコミュニケーションや対人関係に難しさを抱えながらも、高い知能や特定の専門知識を持っています。この記事では、アスペルガーの特性と活かせる職種についてお伝えしていきたいと思います。
アスペルガー症候群とは
アスペルガー症候群とは、自閉症スペクトラム障害(ASD)の一種であり神経発達の障害の一形態です。1950年代にオーストリアの小児精神科医であるハンス・アスペルガーによって初めて記述され、その後1994年に国際疾病分類第10版(ICD-10)において、診断基準が定められました。
アスペルガー症候群の特徴は、社会的な相互作用やコミュニケーションの困難さ、興味の狭さや繰り返し行動の傾向、そして特定の興味や活動に対する強い関心です。しかし、アスペルガー症候群の人々は一般的に知能が平均以上であり、一般的な言語能力を持っています。
症状の現れ方には個人差があり、幼児期にそれほどこだわりや癇癪などが目立たない場合、集団生活や対人的なやりとりでトラブルが生じがちな就学期以降や成人期になってから社会生活に困難さを感じ、気付く場合があります。
アスペルガー症候群とASDの違いって?
先ほどから記述しているように、アスペルガー症候群は自閉症スペクトラム障害(ASD)のひとつですが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
以前は知的障害の有無やことばの発達の経過など、様々な症状・特徴の違いから、細かく診断名をつけていました。しかし症状・特徴には個人差があり、線引きが難しいことから一括りにスペクトラムと捉えられるようになりました。そのため、現在はアスペルガー症候群という言葉が使われず、ASDに統一されました。しかし、正式な診断名ではないものの、知的障害やことばの遅れがなく、コミュニケーションでうまくいかないことが多いという特徴を強く持つという意味で、現在でも状態を表すことばとして使われています。
参照:アスペルガー症候群とは?
https://www.n-fukushi.ac.jp/recurrent/topics/003878
アスペルガー症候群の症状と特性
アスペルガー症候群の特徴は、社会的な相互作用やコミュニケーションの困難さ、興味の狭さや繰り返し行動の傾向、そして特定の興味や活動に対する強い関心です。ここでは症状と特性について見ていきましょう。
社会的相互作用の困難
アスペルガー症候群の方は、他者との社会的な関係やコミュニケーションに苦労する傾向があります。感情や意図を理解するのが難しく、非言語的なサインや社会的な規範に敏感ではありません。
・非言語的なコミュニケーションの理解の困難
非言語的なコミュニケーション(表情、ジェスチャー、視線など)を理解するのが難しい場合があります。他人の表情やジェスチャーから感情や意図を読み取ることが難しく、それが相手との適切な対話や交流を困難にすることがあります。
・適切な距離の保持の難しさ
他人との距離感や身体的な接触に関する社会的な規範を理解しにくい場合があります。そのため、場にふさわしい距離や身体的な接触の取り方がわからないことがあり、周囲の人々との間に緊張や不快感を引き起こすことがあります。
・話題の選択や話し方の特異性
自分の興味や関心について話すことが好きで、他人の関心や話題について話すことが難しい場合があります。また、直接的で論理的な話し方を好む傾向があり、他人の感情的な表現や比喩的な言い回しを理解しづらいことがあります。
・対人関係の理解の困難
他人との対人関係や社会的な規範を理解するのが難しい場合があります。友情や愛情などの複雑な人間関係について理解するのが難しく、他人との信頼関係や親密な関係を築くのが難しいことがあります。
興味の狭さと繰り返し行動
アスペルガー症候群の方は、特定の興味や関心を強く持つ傾向があります。その興味は非常に狭く、特定のトピックやテーマに集中し、その分野に関する豊富な知識を持っています。また、繰り返し行動やルーティーンの変化に対する適応が難しい場合があります。
・興味の狭さ
一般的に特定の興味や関心を持つ傾向があります。この興味は、幼少期から現れることがあり、個々の関心領域は非常に狭くなることがあります。例えば、特定のトピック、テーマ、または活動に関連する情報を集めることや研究することに興味を持ち、その分野において専門知識を築き上げることがあります。この興味の狭さは、他の活動や興味を排除する傾向があるため、日常生活や社会的な関係に影響を与えることがあります。
・繰り返し行動
繰り返し行動やルーチンに強い関心を示すことがあります。これは、特定の行動や活動を反復することや、特定のルーティーン・パターンに固執することを指します。例えば、同じ手順で日常生活の活動を行うことや、特定の興味や関心に関連する行動や活動を繰り返すことがあります。これらの繰り返し行動は、彼らの安定感や安心感を確保するために行われることがありますが、柔軟性や創造性を制限する場合があります。
コミュニケーションの特異性
アスペルガー症候群の方は、直接的で正確な言語を好みます。そのため比喩や暗喩、含蓄的な表現を理解するのが難しいことがあります。また、自分の興味や関心に関する話題に集中し、他者との会話を主題から離れることがあります。
・直接的なコミュニケーション
コミュニケーションにおいて直接的であり、論理的な話し方を好む傾向があります。彼らは言葉の意味を直接理解し、比喩や暗喩などの非直接的な表現を理解するのが難しい場合があります。そのため、彼らの話し方は簡潔で正確であり、感情や意図を含む複雑な言葉遣いや表現を避ける傾向があります。
・興味関心に基づく話題
自分の興味や関心に基づいて話題を選択し、それについて熱心に話す傾向があります。彼らの会話は、特定のトピックやテーマに集中し、その分野に関する専門知識や詳細な情報を提供することがあります。ですが、他人との会話が彼らの興味や関心に関連しない場合、コミュニケーションが難しくなることがあります。
感覚過敏
感覚的な刺激に対して過敏であることがあります。例えば、光や音、触覚などの刺激に過度に反応する場合があります。感覚過敏は、日常生活や社会的な環境で適切に適応するのを困難にする可能性があります。適切な環境の配慮や理解が提供されることで、彼らの感覚過敏に対処し、ストレスや不快感を軽減することができます。
特定の能力の優位性
アスペルガー症候群の方は、特定の分野で優れた能力を示すことがあります。例えば、数学、科学、技術、芸術、音楽などの分野で才能を発揮することがあります。
・詳細な情報処理能力
詳細な情報を処理する能力が高い場合があります。彼らは細かい情報や規則性に敏感であり、複雑なデータや情報を効率的に分析し、整理する能力を持っています。
・優れた記憶力
特定の興味や関心に関する情報を記憶する能力が高い場合があります。彼らは長期記憶や事実の記憶が優れており、専門知識を維持し、深めることができます。
・論理的思考能力
論理的思考能力が高く、複雑な問題を分析し、解決する能力を持っています。彼らは論理的な手順やパターンに従って問題を解決し、論理的な結論を導くことができます。
・創造性
独自の視点やアプローチを持ち、創造性に富んだアイデアや発想を生み出すことができます。彼らは新しいアイデアやコンセプトを探求し、独自の興味や関心を追求することができます。
・専門知識の深さ
特定の興味や関心に関する専門知識を深めることができます。彼らは独自の分野で専門家としての地位を築き、その分野での貢献や成果を上げることができます。
向いている職種って?
アスペルガー症候群の方に向いている仕事は、彼らの特性や得意なことを活かし、自己成長や満足感を得られる環境であることが重要です。
・技術職
プログラミング、ソフトウェア開発、データ分析など、論理的思考や詳細な情報処理が求められる職種が向いています。彼らの論理的思考能力や詳細な情報処理能力を活かし、高度な技術的な仕事に従事することができます。
・研究職
科学や工学、数学などの研究職は、専門知識を深めることや複雑な問題の解決に向いています。彼らの興味や関心に基づいて研究を行い、新しい知識や発見を生み出すことができます。
・専門家職
特定の分野での専門家としての地位を築くことができます。例えば、科学者、技術者、数学者、アーティスト、作家など、彼らの興味や関心に関連する分野での専門家としての活動が可能です。
・情報処理職
詳細な情報の整理や分析、データ入力や管理など、情報処理能力が求められる職種が向いています。彼らの詳細な情報処理能力や論理的思考能力を活かし、情報処理業務を遂行することができます。
・自営業
自分の興味や関心に基づいて独立した仕事を行うことができます。彼らの専門知識や創造性を活かし、自分のビジネスを立ち上げることやフリーランスとして活動することが可能です。
これらの仕事は、アスペルガー症候群の方が自己成長や社会的な適応を促進するのに適した環境を提供する可能性があります。彼らの特性や得意なことを理解し、適切な職業選択を支援することが重要です。
まとめ
今回はアスペルガー症候群の方の特性と向いている職種についてお伝えしてきました。アスペルガー症候群を持つ方々は、独自の特性や能力を持っており、その特性を最大限活かせる職業が存在します。適切な職業選択と適切なサポートを受け、彼らの個々の特性を活かすことで、充実した職業生活を送ることができるでしょう。
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