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統合失調症とは?妄想や幻覚などの症状・対処法など

統合失調症はおよそ100人に1人が発症するといわれるほど身近な精神疾患です。

しかしかつて日本では精神病患者への非人道的な扱いが、まかり通っていた時代があります。

100年以上前に精神科医の呉秀三が「わが邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の他に、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」という名言とともに、精神病患者への差別に一石を投じてから、現在までの間に統合失調症をはじめとする精神疾患を持つ方を取り巻く環境は激変しました。

日本における統合失調症の患者数は約80万人といわれ、多くの方が症状に悩みながらも社会復帰を果たしているのです。

統合失調症とは?

統合失調症は考えや気持ちがまとまらなくなる症状が続く病気で、実際に幻覚や幻聴、妄想、意欲や感情表現の減少、認知機能の低下、など様々な症状が現れ、発症すると日常生活に大きな問題を抱えることになります。

生涯有病率は100人に1人といわれ、とくに10代の思春期から30歳までの患者が全体の7割~8割を占める若者の発症が目立つ疾患です。

男女比はほぼ同数ですが、発症時期に関しては若干男性の方が低い傾向にあり、女性では中年期にも再び発症の小さな山を迎えます。

統合失調症とは1つの病気を指すわけではなく、症状や経過に類似性のある精神疾患を指す症候群だと考えられているのです。

参照:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_03.html

統合失調症の原因

統合失調症の原因はまだはっきりと分かっていませんが、最新の研究では遺伝的要因と環境要因が組み合わさることで発症すると考えられています。

脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れるなどの生物学的問題に、大きなストレスや物質使用などの特定の外的要因がかかることで誘発されるといわれます。

妄想や幻覚・不眠などを伴う統合失調症の主な症状

統合失調症は数日から数週間かけて発症する場合もあれば、数年かけて発症するなど個人によって発症のタイミングにもばらつきがあります。

どのような症状が現れるかは患者によって異なりますが、しばしば生活面や仕事、対人関係に大きな支障をきたすような重い症状が現れるのです。

統合失調症の代表的な症状として陽性症状や陰性症状などがあり、他にも思考障害や奇異な行動がみられる解体症状や集中力、記憶力、整理能力、計画能力、問題解決能力などに問題が生じる認知障害が現れることもあります。

ここでは陽性症状と陰性症状について解説します。

陽性症状

陽性症状の「陽性」とは「本来ないはずのものが現れる」ことです。

神経伝達物質のドーパミンが過剰になると神経の働きが過敏になり、幻覚や妄想などの症状が現れます。

幻覚は無いはずの音や視覚、匂いなどを自分だけが感じることです。

中でも音の幻覚(幻聴)が圧倒的に多いうえに、正常か否かの判断がつきにくいため、病気の認識が難しいという特徴があります。

妄想とは通常であればあり得ないことを、間違った解釈で思い込むことです。

明らかに矛盾する証拠があり、周囲が説得しても、患者は受け入れようとはしません。

妄想には関係妄想や被害妄想、注察妄想など様々あります。

具体的には「隣人がひそひそ話しているのは自分のことを言っている」「会社の同僚が自分にミスをなすりつけた」「窓から覗かれた」などと思い込んでしまいます。

陰性症状

部分的にドーパミンの伝達が少なくなることで、正常な精神機能の低下や本来あるべき機能が無くなってしまう陰性症状。

陽性症状よりも分かりにくく、投薬による効果も限定的なため、症状が長引くことも考えられます。

・感情の鈍麻・平板化……喜怒哀楽が乏しくなる

・思考能力低下・障害……思考力の低下により言葉数が極端に減ったり、内容のない会話をしたりする

・意欲の減退……意欲や気力がわかず、集中力や処理能力も低下する

・コミュニケーションへの支障……他人と関わりをもたず引きこもる

統合失調症の発症時期について

統合失調症は発症の時期によって3つに分類され、症状の現れ方や予後も異なります。

参照l:国立国際医療研究センターHP https://www.hosp.ncgm.go.jp/aboutus/medicalnote/s013/001/index.html

破瓜型(解体型)

10代半ばごろの思春期から発症する破瓜型は最初に陰性症状が現れ、つぎに幻覚や妄想などの陽性症状に移行していきます。

悪化すると思考が支離滅裂になり、奇異な行動をとることも少なくありません。

投薬の効果も薄く慢性化しやすいため、進行すると性格が変わってしまい予後も悪いとさる難治性の統合失調症です。

緊張型

20歳前後に発症し突然激しい興奮状態になる反面、外部の刺激に反応しなくなる昏迷状態になるなど目立つ症状がでます。

しかし数カ月ほどの一定期間で症状が治まり、投薬の効果も期待できるタイプです。

ただし自己判断で治療を止めると再発の可能性もあるため注意が必要でしょう。

妄想型

特徴としては幻聴と妄想など陽性症状が顕著で、20~30代に発症することが多いといわれます。

ほかのタイプよりも発症が遅く、性格が変わるということも少なく投薬の効果も大きい場合が多いため、比較的治療しやすいといえます。

統合失調症発症から治療へ

統合失調症を発症すると治療は薬物療法が基本です。

過剰なドーパミンをブロックする抗精神病薬を中心に、睡眠薬、抗不安薬などによって治療が行われます。

ここで重要なのは症状が軽くなってきたからといって、自己判断で服薬を中断するのは厳禁だということです。

統合失調症は再発しやすいため、服用を中止すると1年以内に約80%、2年以内に98%の患者が再発するという報告もあります。

再発を繰り返すことで薬の効果も低下するので、減薬に関しては主治医とよく相談しましょう。

統合失調症の症状を本人が認識するのは難しいため、周囲の人たちの気づきが重要です。

実際、早期に治療を開始すると、治療の効果が高いことが分かっています。

早期発見と早期治療、そして医師の服薬の指示を守ることが治療を行うのに大切なポイントです。

治療では投薬以外にも心理療法や生活訓練などを併用し、適応しやすい考え方を身に付けることでストレスを軽減して、統合失調症の再発率を下げます。

統合失調症患者の過半数は回復し、重度の障害が残るのは20%程度といわれ、現在は回復可能な病気になりました。

統合失調症の治療技術は日々進歩しており、薬の進歩の恩恵を最も受けた病気ともいわれているのです。

【統合失調症の治療】

・投薬治療(向精神薬・抗不安薬・睡眠薬)

・リハビリテーション(認知リハビリテーション,地域社会を基礎とする訓練,および支援サービスを含む)

・精神療法

まとめ

今回は統合失調症の症状や対策についてお伝えしました。

世界で2400万人もの患者がいる統合失調症は、WHOの調査によると自殺者の14%が統合失調症を患っていたという調査結果があります。

しかし1950年代にフランスで初めて抗精神病薬が誕生し、20世紀に統合失調症の研究が進んだことにより、現在までいくつもの新薬が開発され統合失調症を回復可能な病気にしてきました。

症状を悪化させないためには早期発見・早期受診は重要であり、そのためには患者本人や家族が統合失調症への理解を深めていく必要があります。

正しい治療で症状が回復すれば、社会復帰の道も開けるでしょう。

働けるようになれば無理をしない様に少しずつ、社会の中に自分の居場所を探してみてはどうでしょうか。

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