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認知行動療法(CBT)はうつ病にも効果あり?やり方などを解説

京都大学の研究者が中心となり2017年にイギリスの学術誌「The British journal of Psychiatry」に、認知行動療法がうつ病へのアプローチとして有効だとする研究結果を発表しました。

しかも軽度から重度までのうつ病の患者に対して、同じように効果的だと分かったのです。

従来うつ病治療の中心として行われてきた薬物療法との効果の差も、これまで考えられていたほど大きくないという研究結果が出ています。

症状の程度に関わらず、重要なうつ病治療の一環として考えられるようになってきた認知行動療法について解説します。

参照:京都大学HP https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2017-01-27

うつ病とは?

生涯でうつ病にかかる人の数は日本人なら15人に1人といわれるほど、誰しもがうつ病になる可能性があるの

です。

症状を理解して早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切になります。

うつ病の症状

うつ病は一言でいえば脳のエネルギーが欠乏することで、脳システム全体に不具合が起きている状態を指します。

気分障害の一つであり、憂うつな気分や意欲の低下、集中力の散漫、不安や焦燥感など心の症状の他にも、身体的には不眠、食欲不振、性欲減退、疲労感などの症状を伴うのです。

もちろん気分の浮き沈みは誰にでもあることで、その際に表れる不具合は脳のエネルギーが欠乏していなければ本来備わっている自然治癒力により回復されます。

しかしいつまでも改善しなかったり悪化したりすると、日常生活に大きな支障を起こす病気となるのです。

日本では6.7%、実に15人に1人がうつ病を経験しているという調査結果もあり、うつ病は誰でもかかる可能性のある病気といえます。

参照:厚生労働省HP「こころの耳」 https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad001/

うつ病の原因

私たちにとって身近な病気であるうつ病ですが、実はその原因に

ついては十分に解明されていません。

「ストレス」「脳内の神経伝達物質の変化」「体質」などがうつ病の原因とされており、この3つが重なってうつ病を発症すると考えられます。

あるアンケートによると日本では8割が「仕事上のストレス」でうつ病になったと回答しており、「職場や学校での人間関係のストレス」との答えも4割以上に上ることから、日々のストレスは見逃せない要因の一つといえるでしょう。

うつ病の治療・対策

うつ病の治療法としては「休養」「環境調整」や「薬物治療」「精神療法」などがあります。

特に休養や環境調整はうつ病治療の第一歩です。

もし職場でのストレスを強く感じているなら「仕事内容で配慮をしてもらう」「配置転換を希望する」「転職して職場環境を変える」などストレスの軽減を図ることも、うつ病を長引かせない上で重要でしょう。

またSSRIやSNRIなどの「抗うつ薬」の使用は治療の中心となります。

他にも症状に合わせて「抗不安薬」「睡眠導入薬」「気分安定薬」「非定型抗精神病薬」などの使用も有効です。

そして精神治療の一つである認知行動療法は、近年その有効性が高く評価されてきた治療法であり、薬物治療と共に行うことでうつ病治療の効果アップが期待されています。

認知行動療法(CBT)とは?

うつ病の方でなくとも、様々な局面でマイナス思考に陥ってしまうことは誰しもあるのではないでしょうか。

何らかの感情の問題に対して起こる凝り固まり歪んでしまった「認知」(ものの考え方や受け取り方)や「行動」に働きかけ、心の動きのバランスを整えてストレスを軽減させる療法です。

認知に関わることに、何か出来事があったときに咄嗟に浮かぶイメージ(自動思考)があります。

例えばポジティブな人とネガティブな人では同じ出来事を体験しても咄嗟に浮かぶイメージが違うのです。

この場合、悲観的な自動思考は大きなストレスに繋がりかねません。

ネガティブな自動思考の癖を修正していくことで、認知の歪みを治しストレスを軽減していくのです。

認知行動療法はうつ病だけでなくパニック障害や強迫性障害、統合失調症など多くの精神疾患でも高い治療効果があるとされています。

投薬治療と認知行動療法を組み合わせることで治療の成功率を高めることが期待されているのです。

参照:厚生労働省HP「e-ヘルスネット」

うつ病の治療に用いられる認知行動療法

実際に認知行動療法ではどのようなことが行われるのか解説します。

認知行動療法の考え方

気分や行動に大きな影響を与える認知。

この認知の癖を知るうえで重要になるのが自動思考です。

自動思考とは何かあったときに文字通り自動で浮かぶ、考えやイメージを指します。

そして自動思考に特定の傾向やくせをもたらす、潜在的な知識や価値観を「スキーマ」といいます。

スキーマは経験や価値観から形成された個人特有のもので、自動思考に特有の癖をもたらすのです。

例えば「ブドウ」という単語を聞けば一房にたくさんの身がなっているブドウを想像します。

これが自動思考です。

しかしこのブドウが巨峰のように深い紫色をしているのか、マスカットのように緑色の実かは人それぞれでしょう。

これは個人が持つブドウのスキーマが人それぞれ異なるからです。

仮に「Aさんに挨拶をしたが返事がなかった」という出来事があったとします。

その出来事に対して「Aさんはわざと無視した。自分はAさんに嫌われている。なにか怒らせることをしたのだろうか」と考えが飛躍するのは、認知に歪みがあるのかもしれません。

この「Aさんに嫌われている」という認知は、自分を傷つけ、人間関係を憂鬱なものにしてしまいます。

ここでポイントは、この情報だけではAさんが挨拶を返さなかったのは、意図的なものか否かは分からないということです。

認知行動療法では「Aさんに挨拶の声が聞こえなかったのかもしれない。次はもっとはっきりと挨拶してみよう」と違う視点で考えます。

「Aさんが挨拶してくれなかった」という出来事に対して「Aさんに嫌われた」という自動思考が浮かんだのなら、その奥には「自分は人から愛されない」というスキームが潜んでいるのかもしれません。

認知の偏りには以下のようなものがあります。

・感情に基づいた物事の決めつけ

・フィルタリング

・過剰な一般化

・拡大解釈と過小評価

・自己非難(問題の個人化)

・白黒思考(0か100か)

・結論の飛躍

・マイナス思考

・レッテル張り

・○○すべき

参照:厚生労働省HP「うつ病の認知療法・認知行動療法」

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pd

実際の認知行動療法

医師やカウンセラーと面談を繰り返しながら行われることが多く、3ヶ月程度かかるといわれています。

また1対1の個人療法以外にも、複数人で行う集団認知行動療法もあります。

認知行動療法の種類としては以下の通りです。

・コラム法(カムラ法)

出来事や感情、適応的な思考などを書くことで、自分の認知の癖に気づき整えていく認知療法です。

ネガティブな認知の癖を持つ方に効果があるといわれています。

・暴露療法(エクスポージャー法)

段階的に不安を感じている事柄に対して慣れていくことを目指す行動療法です。

不安症やPTSD、強迫症などの治療に用いられます。

・セルフモニタリング法

自分が考えや行動、気分を記録することで客観的な気付きを得る行動治療です。

手帳やアプリなど身近なものを使うと、個人でも取り組みやすいといわれています。

まとめ

今回はうつ病や様々な精神疾患で効果を期待できる、認知行動療法についてお伝えしました。

「心の風邪」といわれるうつ病ですが、原因や症状を理解して早期発見・早期治療を心がけないと、回復に時間のかかる「心の骨折」になってしまいます。

環境を整え、医療機関を受診することで、うつ病による不調を長引かせないようにしましょう。

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