これまでの人間の歴史の中で、今日ほど多様性に焦点が当たった時代はないでしょう。
ダイバーシティの基本理念に基づき、社会の常識や法律も大きく変化しています。
障害者雇用促進法も度々改正され、より障害を持つ方たちが働きやすい社会環境が整ってきました。
しかし障害者雇用に踏み出せない企業もあり、そういった企業の中に「障害者を雇用することで生産性が落ちるのではないか」という戸惑いがあるのも事実です。
もちろん障害者雇用には現在進行形で様々な課題が山積していますが、実際に障害者を雇用している企業ほど、懸念や不安が小さいという傾向もあります。
今回は障害者雇用を進める上での懸念や、実際に起こるトラブルへの対策をお伝えします。
参照:障害者職業総合センター「障害者雇用に対する企業の意識と雇用実態との関係」
障害者雇用
障害を抱えながら就労するにあたって、自分のペースで働けるように、企業からの配慮を望む方も多いのではないでしょうか。
障害の特性や状態を理解してもらい、体調や仕事内容で合理的配慮を得られた場合、長く安定した働き方が可能です。
こうした障害者のニーズに合った就労の方法として障害者雇用があります。
障害者の就労を促進する目的で制定された障害者雇用促進法では、企業や自治体は一定の割合で、障害のある方を雇用するように定められています。
他にも障害者への差別の禁止や、合理的配慮が義務付けられているのです。
障害者雇用の悩み
障害を持つ方が働くに当たっては、障害当事者だけではなく、迎え入れる企業側にも悩みや課題があります。
多くの企業が障害者雇用で直面する悩みについて考えてみましょう。
障害者にどのような職務を割り当てるのか
障害者雇用を行った企業が、最初に直面する悩みは業務の切り出しです。
「簡単な業務を切り出そう」と考えてしまいますが、障害者雇用が進むにつれて「簡単で必要性の低い業務を無理に作り出す」という事態になりかねません。
障害者に業務を振り分けることが、企業の負担になっては継続的な障害者雇用を行うことが難しくなるのです。
障害者の適性や能力に合った職場配置
企業へのアンケートによると、障害者を受け入れた後のフォローは、7割近くが配置先の部署で行っています。
必然的にトラブルが多ければ、配属部署への負担は増加していきます。
そのため職場環境を整え、障害の特性を理解して、適正や能力にあった部署への配置が大切です。
たとえば車椅子を利用している方を、動き回る業務の多い部署に配置することはないでしょう。
しかし障害の特性は目に見えるものばかりではありません。
「コミュニケーションをとることに困難がある」「集中力に問題がありミスが多い」「パニックを起こしやすい」など、障害の症状は個人によって異なります。
そのため適切な部署への配置に、頭を悩ませる企業は少なくないのです。
従業員の障害への理解
障害者が働き続けるためには、周囲の理解が欠かせません。
一緒に働く従業員が障害への理解が足りないと、障害を持つ方への配慮を負担に感じるかもしれないのです。
障害者雇用で雇用された方が定期的に通院する必要がある場合でも、もし周囲が障害への理解が足りなければ、休みを言い出しにくいといった問題も出てくるでしょう。
離職率の高さ
コストをかけて障害者雇用で採用しても、すぐに辞めてしまっては元も子もありません。
しかし実際は雇用した障害者が、その後も就労を続けるわけではないのです。
1年後の職場定着率を障害別に調べた調査によると、身体障害は60.8%、知的障害は68.0%、精神障害は49.3%、発達障害は71.5%というデータがあります。
参照:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者の就業状況等に関する調査研究」
障害者雇用が進まない企業の課題
障害者雇用が進まない企業を取り巻く状況は様々です。
これらの企業に共通する課題を考えてみましょう。
産業の特徴
障害者雇用率の低い産業の特徴として、専門性の高さなどが挙げられます。
・教育、学習支援業
・学術研究、専門、技術サービス業
・不動産、物品賃貸業
・金融、保険業
・情報通信業
企業規模が小さい
一般的に規模の小さな企業では、一人の従業員が複数の業務を兼務していることが少なくありません。
そのため障害者に業務を切り出すのが難しくなるのです。
また障害者雇用に掛けられるコストやリソースが、大規模な企業ほど潤沢ではない点も、規模の小さい企業で障害者雇用が進まない理由でしょう。
従業員の障害への理解不足
従業員の障害への理解不足は障害者雇用を進めるにあたり、大きな問題となります。
とくに障害を持つ方と一緒に仕事をする従業員は、職場に障害者が加わることを負担に感じるかもしれません。
従業員の中の不満や不公平感を軽減し、スムーズに業務を進めるためにも、障害への理解を深めることが重要になるのです。
環境整備の不足
障害を持つ方が働くための、職場環境が整っていない企業もあります。
車いす用のスロープを設置する、段差をなくす、誰でも見やすいようにデータの文字を大きくするといった、障害を持つ方が働きやすい環境整備が必要です。
障害者雇用の対策
多くの企業が障害者雇用に取り組みたいと思っていますが、対策しなければならない課題があることも事実です。
円滑に業務を行うための対策をお伝えします。
なぜ障害者雇用を行うのかの企業の方針を明確にする
障害者雇用を進めるためには、現場の従業員一人ひとりが障害への理解を深める必要があります。
従業員の障害への理解を深めるには「なぜ会社は障害者雇用を行っているのか」という、企業の障害者雇用の理念を理解が重要です。
そのうえで研修や実習などを行い、障害を持つ方が一定の配慮をすることで、共に働ける人材だと従業員一人ひとりに理解してもらう必要があります。
業務上の配慮
障害者雇用には「ハード」「ソフト」両面からの業務上の合理的配慮が必要です。
身体障害の方のための社内のバリアフリー化や、視覚障害者のための点字ディスプレイの設置、聴覚障害者のための集音機器を準備するなど、働く障害者の特性に合わせた配慮が求められます。
ソフト面では障害者が能力を発揮できる仕組み作りがポイントです。
これらは障害者雇用だけでなく、他の従業員にとっても、ミスを防ぎ業務の効率化を進めるヒントになるものでしょう。
【ソフト面での改善例】
・業務の優先順位の明確化
・分かりやすい業務指示
・作業手順のマニュアル化
・タイムスケジュールを具体的に示す
・業務指示や相談をしやすい体制作り
障害を持つ従業員との円滑なコミュニケーション
障害を持つ方の中には、一見するとどのような障害があるのか分からない方もいます。
得意なことや苦手なことといった障害の特性、業務や休憩時の関わり方などを、あらかじめ障害者が企業に伝え、それを従業員の間で共有することで円滑なコミュニケーションが期待できます。
ただしどのような障害を持っているかといった個人情報に関しては、誰に開示するのかを障害を持つ従業員に聞き取り、確認してから行ってください。
障害者雇用を促進するために利用できる制度
企業が障害者の就労を促進するためには、適切な職場環境を整える必要があります。
助成金や補助金を活用して、障害者を受け入れる準備をしましょう。
また国だけではなく、地方自治体によっては独自の補助金制度を導入している場合もあります。
・障害者雇用助成金
・障害者作業施設設置等助成金/障害者福祉施設設置等助成金
・障害者介助等助成金
・重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
・障害者職場実習支援事業
・トライアル雇用助成金
・特定求職者雇用開発助成金
・障害者雇用納付金制度
・障害者雇用安定助成金
・人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)
まとめ
今回は障害者雇用を進めるうえでの課題や対処法をお伝えしました。
障害を持つ方をスムーズに受け入れるためには、ハード面・ソフト面での準備が欠かせません。
私たちCOCOCARAは、就労移行支援事業所として、障害等の事情があってお仕事に就くことに苦労している方に対して、相談や就職準備、アドバイスなどのサポートを行っています。
求められるビジネススキルを身に付けることで、障害を持っていたとしても企業にとって大切な戦力となる人材となるでしょう。
また継続的な就労のために、就職後も就労定着支援を行っています。
「障害があるから仕事が見つからない…」などのお悩みを抱えている方は、一人で悩まずに一度相談に来てみてはいかがでしょうか。
私たちと一緒にご自分に合った働き方や生き方について考えてみませんか。
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